2021/10/25
竹炭愛好家の間で「数ある竹炭の中でも最高品質」と評判の竹炭をご存知でしょうか。そんな良質な竹炭づくりを行っているのが、「竹炭かぐや」(佐賀県鳥栖市)の平田孝一さんです。
平田さんの竹炭は一般家庭をはじめ、飲食業界や住宅メーカーなどさまざまな分野で人気を集めています。
「竹炭の品質を見定める方法の一つが焼成温度の高さです。一般的に品質が良いとされる竹炭でも炭窯の焼成温度は1000℃ほどですが、竹炭かぐやでは特別な炭窯を使用して1300℃もの高温で焼き上げています。これにより、炭素の含有量や通電性などに優れた極めて高品質な竹炭ができます」と語る平田さん。
今回、全国的にリピーターの多い平田さんが焼き上げる竹炭の特徴や、仕事への思いなどについてお話を伺いました。
聞き手:株式会社TAWARA 編集部
竹炭工房「竹炭かぐや」代表。佐賀県鳥栖市の竹林で製炭を行うとともに、住宅などへの埋炭、敷炭の施工、竹炭窯の製造・設置などを手がけている。また、「人とのつながりを大切にしたい」との思いから、自身の炭窯がある竹林を会場に雅楽演奏会を開催するなど、幅広い活動を行っている。
―本日は貴重なお時間をありがとうございます。
本日は竹炭の魅力や、平田さんの人となりなどをじっくりお聞きしたいと思います。
平田 : どうぞ宜しくお願いします 笑
巣ごもり需要もあってか、最近は竹炭に関するお問い合わせが増えています。やはり、多くの方が自身の健康について見直すようになったのだと思います。
健康についてですが、昔から「炭焼き職人は長生きする」という話が伝わっています。
炭焼き作業中に出る煙や、選別・加工作業などの際に炭の粉を吸い込んだりと、炭焼き職人の仕事は、一見すると身体に悪そうに見えますよね。しかし、これが健康に大いに寄与していると思います。
例えば、焼成中に出る煙は竹酢液の成分とほぼ同じです。二百数十種類もの有用成分が含まれている煙なので、有害な煙とは少し違うと思います。
以前、鼻炎持ちの方がしばらく炭焼きを手伝いに来て下さっていましたが、炭窯に通って窯煙を浴びているうちに、いつの間にか鼻炎が治ってしまったこともありました。
また、吸い込んでしまう竹炭の粉については、昔は「薬の一種」として使われてきたものですから、身体にとって良い働きをすると思います。
野鳥や鹿などの動物は山火事によって“自然にできた炭”を食べるのですが、これは整腸作用のある炭を体内に取り入れるためと考えられています。
私自身は、日々の仕事で身体に取り込まれている煙と竹炭の粉が、竹炭職人を長寿たらしめているのではないかと考えています。
―平田さんもエネルギッシュなお姿で元気そのものです
平田 : 職業柄、毎日のように森林浴をしているせいもあるでしょうね 笑
あくまでも私個人の考えですが、竹炭は身体を健やかにしてくれるのだと思います。
正直、竹炭と健康の因果関係についてはエビデンスも少なく、この分野における研究も進んでいないので分かっていないことが多いです。
しかし、多くの方々が竹炭かぐやの竹炭をご利用いただき、喜びの声をたくさん寄せて下さっています。
―どういった声が寄せられているのか教えていただけますか?
平田 : お風呂に入れた方からは、「身体のしびれが突然治った」「冷え性やアトピー性皮膚炎、冬場の肌の乾燥やかゆみが改善した」「髪の毛が太くなった」という方がいらっしゃいます。
飲料水に入れてお使いになった方からの声は、「糖尿病やアレルギー性鼻炎が改善した」「風邪をひかなくなった」「口臭がなくなり、口内炎も減った」などが多いですね。
調理に使用した方々からは、「油に入れると天ぷらや唐揚げが美味しく揚がるようになった」「油が酸化しにくいので繰り返し使えた」という声が寄せられました。
また、「パン生地に竹炭の粉を入れると発酵が安定し、発酵スピードも早まって美味しいパンが焼けた」との声は興味深かったですね。
―本当に多くの声が寄せられているんですね。
平田 : 記録しているだけでもこうした喜びの声は数百件ありますが、先にお伝えしたようにこの分野における研究が少なくエビデンスも少ないので、効果・効能などはいっさい書けないんです。
現在、竹炭かぐやのWEBショップで販売している『スヤスヤ竹炭まくら』という商品があるのですが、ご購入者から、「睡眠の質が上がった」「寝たきりでほとんど意識のないお年寄りが、テレビ画面の文字を読み始めた」「肩こりの痛みが治まった」などの声が寄せられていますが、科学的な証明はありません。こうした因果関係を研究すれば面白いと思いますね。
昔から生活のさまざまな場面で利用されてきた竹炭ですが、しっかりとしたエビデンスが出ているのは消臭効果や湿度や温度の調整効果、化学物質の吸着くらいでしょうか。
―竹炭の持つ性質などはまだまだ解明されてない部分が多そうですが、こうした竹炭の力に魅せられている方が多いのでしょうね。
平田 : ひとつ面白い話があります。これはお客さまに教えていただいたのですが、枯れかかっている木の周囲に溝を掘って、そこへ砕いた竹炭をまくと、3〜6カ月ほどで木が元気になったんです。これには私も驚きました。
竹炭のpHはアルカリ性なので、おそらく酸性土壌の矯正に用いる石灰散布と同じような効果があったと思うのですが、竹炭の神秘的な力をまざまざと見せつけられた出来事でした。
―一連のお話を伺っていると、平田さんが焼き上げる竹炭はコアなファンというか「モノ選びにこだわる方々」に選ばれているとの印象を受けます。
他の竹炭との違いや品質へのこだわりなど、お話できる範囲で教えて下さい。
平田 : いちばん大きな違いは炭窯です。
炭の品質を左右するのは焼成温度の高さなのですが、一般的に品質が良いとされる竹炭でも炭窯の焼成温度は1000℃ほどです。
しかし、竹炭かぐやでは「かぐや窯」という温度の上がりやすい特別な炭窯を使用しているので、1300℃もの高温で焼成が可能です。この窯で焼いた竹炭は、炭素の含有量や通電性などに優れるなど極めて高品質な竹炭になります。
良い竹炭を爪ではじくと「キンッ」という金属音がしますが、かぐや窯で焼いた竹炭はこの音が非常に高いんです。良い炭を選ぶ際は、こうした音も気にすると良いと思います。
かぐや窯で焼かれた竹炭を電子顕微鏡で観察すると、縦横にあいた無数のミクロの孔(あな)が、きれいな六角形の構造になっています。
こうしたハチの巣のような多孔質の表面積は、竹炭30㎝でも1万㎡以上と言われていて、サッカーのグラウンドに匹敵する広さになります。
そのため、通常の竹炭と比べても調湿や消臭、有機物や有害VOCの吸着効果が非常に高くなります。
―このような上質な竹炭を作るには、かなり修業が必要なんでしょうか。
平田 : 実はこのかぐや窯を使えば、誰にでも高品質な竹炭を1人で作ることができます。初心者でも始めやすく、製炭時における失敗が少ないのもこの窯の特徴です。
もともと私は「全国的に広がる竹害を何とかしたい」との思いで竹炭職人の道に進みました。動機は環境保全活動だったんです。
こうした理由から、竹を有効活用でき高品質な竹炭が作れる「かぐや式の竹炭づくり」を多くの方々に広めるため、築窯のお手伝いもしています。
ご依頼があれば、日本全国どこへでも伺うようにしています。これまで全国30カ所以上にかぐや窯を設置してきました。
竹炭を焼き、それを多くの方々が使っていただくことは森林の保全につながります。
竹は循環できる資源なので、有効活用しない手はない。誰でも高品質な竹炭を1人で作れるかぐや窯の普及を通して、環境問題への貢献と高品質な竹炭のお届けができればうれしいですね。今後も竹炭の可能性や品質を追求しながら製炭業を続けていきたいと思います。
あと、品質についてですが、昔から「新月に切った竹は長持ちする」と言われているので、竹の伐採作業は新月のときに行っています。
昔の職人がやっていたことをなぞっているだけなのですが、やはり良い炭ができます。
製炭業は同じ仕事の繰り返しですが、やはり良い炭が焼けるとうれしいものです。
炭窯から竹炭を取り出すたび、「もう少し上手くなろう」「もう少しキレイな竹炭を目指そう」との思いが湧いてきます。
丹精込めて焼いた竹炭がご縁のある方々の手に渡り、何かを感じていただければうれしいですね。
―若い方々など、これまで竹炭に親しんでこなかった方々も多いと思います。
竹炭を使うのは初めて、という方に向けたおススメの使い方を教えて下さい。
平田 : まずはお風呂に入れてみてはいかがでしょうか。竹炭に含まれるミネラル分が溶け出してお湯が柔らかくなり、肌に優しくなります。温泉に浸かっている気分になりますよ。遠赤外線の効果で身体が芯まで温まり、心身の疲れを癒してくれます。
お風呂用竹炭は竹炭かぐやのオンラインショップでも購入できます。
竹炭を入れて炊くご飯もおススメです。炊飯ジャーでご飯を炊くとき、洗ったお米の上に飲料・炊飯用竹炭を乗せてそのまま炊くだけで、ふっくらと美味しいご飯が炊けます。
また、ペットボトルのお水やポットのお湯に入れると、竹炭に含まれる豊富なミネラルが溶け出すので、味がまろやかになって美味しくなります。
この飲料・炊飯用竹炭ですが、ご購入者の方々は本当に色いろな使い方をなさっていて、
「活け花の中に入れると花が長持ちするようになった」
「熱帯魚の水槽に入れると水が汚れず、病気にもかからなくなった」
「パソコンの周辺に置くと不思議と埃が付かなくなり、目の痛みや肩こりも軽くなった」
などの声も届いています。
私は都会に住んでいらっしゃる方の方が、自然を感じられると思っています。自然の中に身を置いていると、木々の匂いや風の音を当たり前に感じてしまうものです。
しかし、都会生活を送っている方の方が、ちょっと竹炭をお風呂に入れてみたりすることで自然を実感できるんですね。
暮らしの中で竹炭をうまく使っていただいて、都会の中にいながら自然を感じていただければと思います。
自宅で特に自然を感じたいときにおススメなのが、熱した竹炭をそのままホットコーヒーに入れて飲む「熾火(おきび)コーヒー」です。
この飲み方は、とある編集者の方に教えていただいたのですが、コーヒーの味がまろやかになってとても美味しい。
アツアツの竹炭をコーヒーに入れる際の「ジュワッ!」っとした音も、野趣を感じられて楽しいですよ。
編集者の方曰く、この熾火コーヒーは「胃の調子を整え、竹炭がカフェインを吸収してくれる」そうです。
これまで色いろな木炭や竹炭などを使って熾火コーヒーを楽しんでいたそうですが、昨年、縁あって竹炭かぐやの飲料・炊飯用竹炭を使ってみたところ「これまででいちばんコーヒーの味が柔らかくなって美味しい!」と喜んで下さいました。
キャンパーなどの間でも人気が出そうな熾火コーヒーですが、自宅で簡単に作れます。
魚焼き用などの「焼き網」をガスコンロの上に置き、そこへ飲料・炊飯用竹炭を載せて火を付けます。
竹炭が熾火の状態(炎を上げず芯の部分が真っ赤に燃えている状態)になったら、ホットコーヒーにそのまま入れます。お好みでホットコーヒーに砂糖などを入れておくと、かすかにキャラメルの風味がして美味しくいただけるそうですよ。
編集部注:室内で炭を燃やす際は換気にお気を付け下さい。また、火のついた炭をそのまま放置すると火災の原因となるのでご注意下さい
熾火コーヒーを飲むと、熱した竹炭の香りや炭火で泡立つコーヒーの香りなど、自宅にいながら野外にいるような気分を味わえます。
ひとかけらの竹炭でも、こうした使い方で自宅にいながら豊かな自然を感じることができます。ぜひ皆さまも暮らしの中に竹炭を取り入れて、その魅力を感じていただければと思います。
丹精込めて焼き上げた竹炭が、皆さまのすこやかな暮らしの支えになれば幸いです。
―本日は貴重なお話をありがとうございました。